くまもとのジイちゃんが
「山ば作られるカミサマはおられっとよ」と、夏休みに川で遊んでいるときに、急にボクに言った。
はじめはなんのことかぜんぜんわからなかった。
ジイちゃんは、むこう岸からことばをほうり投げるようにして、せつめいした。
「けんすけ、すなばで山ば作ったことあるとよ?いっしょけんめい、つんでも、つんでも、次の朝に見てみんしゃい。山ば、くずれとー。じゃけん、山作りのカミサマがワシらの見えんとこで、ぎゅっし、ぎゅっし、と固めておられる。ワシはずいぶん小さいときに、一度だけその音を聞いた」けんすけが川から上がると、せみの声が遠くなって日がかたむき、山のかげがおおいかぶさってくるような気がした。
こわくなって、急いでジイちゃんの手をつかんで、
「早くかえろ」
と言った。夕ごはんを食べたら、そのことはもう忘れていた。
その夜、ろうそくがゆらゆらしている部屋で、やさしい声なのにこわい顔をした変な人が、ぼくにはわからないことをつぶやいている夢を見た。
山を作るのはカミサマじゃなくて、このオニみたいな人じゃないかと思った。でも、ぎゅっし、ぎゅっしという音は聞こえなかった。
この人は山作戰という名前で、木曜10時にここに行くと会えるらしいとあとで知った。
山の写真
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